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講義の内容紹介

計算生命科学の基礎

- 生命科学と理工学の接点から社会への応用まで -

2014.10.7
  • はじめに:計算生命科学の概要
    江口至洋(理化学研究所HPCI計算生命科学推進プログラム、副プログラムディレクター)

    1980年以降急速に進展してきた計算生命科学が、いかに生物学、医学・薬学、農学などの生命科学の研究を促進してきたのか、その理論的背景は何であったのかを、DNAやタンパク質の分子レベルから細胞、さらには組織、臓器レベルの階層性を意識しながら示し、もって本講義全体の紹介とする。

 

第1編 ゲノムから見る生命科学

2014.10.14
  • ゲノムに記された大規模生命情報の解析
    奥野恭史(京都大学大学院医学研究科、教授)

    研究室で日々生み出されるDNAの塩基配列データやRNAseqデータ、がんゲノムプロジェクトから得られる膨大なパーソナルゲノムデータなどは、現在、生命科学の共通研究基盤となっている。ここではそれら生命科学に関連するデータベースを紹介するとともに、それらデータベースからのデータマイニング技術を紹介する。
2014.10.21
  • バイオメディカル・インフォマティクス
    奥野恭史(京都大学大学院医学研究科、教授)

    パーソナルゲノム情報をベースとした個人に最適な医療「個別化医療」の実現に向けて、バイオメディカル・データ解析が必要となる。ここでは、個人のゲノム情報やオミクス情報を考慮し、新たな医療や創薬を展開するため必要となるバイオメディカル・データのデータマイニング技術を紹介する。
2014.10.28
  • 遺伝子ネットワーク解析:遺伝子間の相関と因果関係を見る
    土井淳(株式会社セルイノベーター研究開発部、部長)

    次世代シークエンサーやDNAチップなどの計測技術を用いて得られた細胞内遺伝子発現量の多種類のデータ(遺伝子発現データベース)から遺伝子間の相互関係を明らかにする手法は多くある。ここでは世界的な遺伝子発現データベースの紹介を行うとともに、遺伝子間の統計的因果関係を推計する方法など、現在の生命科学の研究現場で用いられている各種手法を紹介する。
2014.11.4
  • 細胞のシステム生物学
    江口至洋(理化学研究所HPCI計算生命科学推進プログラム、副プログラムディレクター)

    生命は細胞に始まり、細胞は生命の基本単位とされている。“生きている”という機能は、10-15から10-11リットルという小さな細胞内で繰り広げられている複製、転写、翻訳、代謝、シグナル伝達などの化学反応に担われている。ここではそのような細胞内化学反応を数理モデル化し、その構造と機能を解明しようとする研究、すなわちシステム生物学の全体像を紹介する。

 

第2編 タンパク質からみる生命科学

2014.11.11
  • 計算生命科学のための量子化学基礎
    佐藤文俊(東京大学生産技術研究所、教授)

    それほど単純ではありませんが「量子力学によって物理学や化学が取り扱う多くの分野で基礎となる法則が完全に明らかになった」とも言われる。ただ、法則が明らかになったことと、現実の研究の場にその法則を適用することとの間には多くの困難な問題が潜んでいる。ここではその困難を乗り越える前準備として、計算生命科学に必要十分な範囲で、わかりやすく量子化学の基礎を紹介する。なお、量子化学は分子動力学計算でも必須の学問である。
2014.11.18
  • タンパク質の量子化学計算
    福澤薫(日本大学松戸歯学部、助教)

    コンピューターの進歩もあって、タンパク質などの生体高分子の電子状態を高速かつ高精度に計算できる量子化学手法が求められ、開発されてきている。講義では、タンパク質の量子化学計算を実現しようと開発されてきているフラグメント分子軌道(FMO)法や密度汎関数法などを概説し、タンパク質の分子認識機構やウイルス変異メカニズムに利用した例を紹介する。また最近の取り組みとして、X線結晶構造解析との連携についても紹介したい。
2014.11.25
  • 分子動力学計算と生体高分子の機能解析:タンパク質の動的構造と機能
    中津井雅彦(神戸大学大学院工学研究科、特命助教)

    計算科学的手法の一種である分子動力学(MD)計算について、その基礎理論と実際の計算方法について概説する。また、タンパク質の分子動力学シミュレーションを行う上で必要となる背景知識(力場の取り扱い)や計算手順、および解析法を紹介する。
2014.12.2
  • 分子動力学計算における拡張サンプリングシミュレーション
    中津井雅彦(神戸大学大学院工学研究科、特命助教)

    タンパク質等を対象とした大規模な分子動力学計算において顕著となる、計算できる実時間の制限やエネルギー極小へのトラップなどの問題を緩和する手法として、効率的に系の状態をサンプリング可能な拡張サンプリングシミュレーション(マルチカノニカル法、レプリカ交換法)を紹介する。
2014.12.9
  • タンパク質の生物学的機能と化学反応
    林重彦(京都大学大学院理学研究科、教授)

    タンパク質などの分子の動きを解析する分子動力学計算と、分子の電子状態を解析する量子化学計算を組み合わせることにより、酵素などの生体高分子が関与する反応機構の分子論的解析が可能となっている。2013年のノーベル化学賞はその研究「複雑な化学システムのためのマルチスケール・モデル」、すなわちQM/MM法に与えられた。本講義ではQM/MM法の理論的背景とともに、酵素反応機構の分子論的解析方法の基本的な考え方を紹介する。

 

第3編 医療・創薬における計算生命科学

2014.12.16
  • 製薬におけるビッグデータおよびその解析
    都地昭夫(塩野義製薬株式会社解析センター、グループ長)
    北西由武(塩野義製薬株式会社解析センター、サブグループ長)

    ここ数年ビッグデータが脚光を浴びている。しかしながら、その利活用はまだ始まったばかりである。今後、ビッグデータは医療、製薬分野においてもイノベーションの鍵となりうると考えられる。そこでビッグデータの概論から始め、解析を行うためのアプローチや将来展望などを製薬企業における事例を交えながら解説する。加えて、解析の基本となる統計手法やデータの可視化、IT技術についても紹介する。
2015.1.13
  • 創薬における計算生命科学:分子動力学計算を中心に
    広川貴次(産業技術総合研究所創薬分子プロファイリング研究センター、研究チーム長)

    近年のタンパク質発現手法、結晶化、構造解析手法の進歩に伴い、多くのタンパク質の構造データが蓄積されつつある。一方、結晶化が困難で構造が得られていない多くの場合は、ホモロジーモデルによるタンパク質のモデリングが必要となる。その手法について解説する。分子動力学(MD)によるタンパク質―リガンドのドッキングスクリーニングは、今後コンピューターの能力の飛躍的な向上によりその手法が普及してくと考えられる。ここでは、タンパク質―小分子、タンパク質―タンパク質の相互作用の解析により、具体的な創薬への応用について解説する。
2015.1.20
  • 創薬における計算生命科学:量子化学計算を中心に
    福澤薫(日本大学松戸歯学部、助教)

    量子化学計算の一手法であるフラグメント分子軌道(FMO)法は論理的創薬のための強力な解析ツールになり得る。標的タンパク質へのリガンド結合と分子間相互作用の精密な評価が可能である。ここでは、抗がん剤や抗ウイルス薬との相互作用など、いわゆるインシリコ創薬へのFMO法の適用について紹介する。
2015.1.27
  • 医療におけるビッグデータ
    田中博(東京医科歯科大学大学院疾患生命科学研究部、教授)

    次世代シーケンサの臨床応用(clinical sequencing)の急速な進展とともに、全ゲノム配列情報(WGS)を始めとする膨大な分子情報と従来の臨床病理情報を、融合し(「ゲノム電子カルテ」)、質の高い「精確な医療(precision medicine)」の実現を目指して、医療におけるBig Dataの収集・解析・知識抽出への関心が集まっている。米国NIHでは”Big Data to Knowledge” initiativeが開始され、様々な医療施設で、病因未知の遺伝疾患の原因遺伝子や難治性がんのドライバー変異を発見し、蓄積された膨大な分子―臨床情報から臨床の現場で適切な治療法を、見出すために、自己学習(learning)機能をもった臨床統合情報システムの構築が試みられている。講義では医療のBig Dataの利用の現状と将来の方向を紹介する。
2015.2.3
  • 医療における計算生命科学:不整脈における心臓興奮伝播現象を中心に
    中沢一雄(国立循環器病研究センター研究所、室長)
    稲田慎(国立循環器病研究センター研究所、特任研究員)

    我々の研究グループでは、生命をシステムと見なし、細胞や組織、臓器というように機能単位に構成的にモデル化し、計算科学の手法を用いて生命現象を理解する研究を進めてきた。特に、致死性不整脈の研究において、スーパーコンピュータ上に仮想の心臓モデルを構成し、電気生理学的シミュレーションを行うことで、メカニズムの解明や、予防・診断・治療に役立てるための一連の研究を行ってきた。高速大規模計算、コンピュータグラフィックス、医用画像処理など、さまざまな要素技術が含まれており、不整脈における心臓興奮伝播現象を中心に、その解説を行う。さらに、最近の診療支援に向けた最新技術や研究成果を紹介する。
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