課題4 大規模生命データ解析
大規模生命データ解析
代表
宮野 悟
東京大学 医科学研究所
概要
がんとメタボは国民の健康の最大の関心事です。
ゲノム情報をはじめとする、大規模な生命データを高速に解析し、がんなどの病気の個別化医療の進展に寄与します。
個別化医療とは、個人それぞれのゲノム情報や生活習慣データなどを活用し、個々人に最適な医療・健康管理を行うことです。患者さんにとって安心安全な無駄のない医療が受けられるようになると期待されています。
特 に、がんは、ゲノムに蓄積した変異により、無限に増殖する能力を得て、不死となり、転移し、抗がん剤に対しても薬剤耐性を獲得する、たいへん複雑なシステ ム異常の病気です。我が国では、国民の半分が人生のどこかでがんに直面しています。現在、世界中の研究者が協力して、大規模にがんのゲノムや遺伝子発現異 常の解析をしていますが、その膨大な量のデータ解析がボトルネックになっています。スーパーコンピュータ「京」はそのデータ解析に威力を発揮し、がんのシ ステム異常を網羅的に暴きだすことで、最適ながんの予防、診断、治療法の開発を飛躍的に加速することを目指しています。
また、肥満は医学的 介入が必要な病気です。4℃の部屋で暮らさせたマウスの脂肪細胞がベージュ色のアンチメタボ細胞に変身し、骨格筋の100倍の熱を産生することが判明して います。そのメカニズムの解明は、新たな視点からの肥満是正戦略につながり、肥満・メタボ社会に大きな衝撃を与える可能性があります。「京」はこの脂肪を 燃やすメカニズムの解明に大活躍しています。
5年間の取り組みと成果 BioSupercomputing Newsletter Vol.14より
論文
1. R. Araki, S. Seno, Y. Takenaka, H. Matsuda:
“An estimation method for a cellular-state-specific gene regulatory network along tree-structured gene expression profiles“
Gene, Vol.518, No.1, pp.17-25 (2012)
2. Naoki Matsushita, Shigeto Seno, Yoichi Takenaka, Hideo Matsuda:
“Metagenome fragment classification based on multiple motif-occurrence profiles“
PeerJ, Vol.2, e559 (2014)
3. Keisuke Kataoka, Yasunobu Nagata, Akira Kitanaka, Yuichi Shiraishi, et al.:
“Integrated molecular analysis of adult T cell leukemia/lymphoma“
Nature Genetics (2015)
4. Ryutaro Uchi , Yusuke Takahashi, Atsushi Niida, Teppei Shimamura, Hidenari Hirai, Keishi Sugimachi, Genta Sawada, Takeshi Iwaya, Junji Kurashige, Yoshiaki Shinden, Tomohiro Iguchi, Hidetoshi Eguchi, Kenichi Chiba, et al.:
“Integrated Multiregional Analysis Proposing a New Model of Colorectal Cancer Evolution“
PLOS Genetics (2015)
体制図
※2015年4月1日現在