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統括責任者メッセージ

柳田敏雄

今日生命科学は飛躍的に発展しております。これは遺伝子工学を使った分子生物学の進展によるところが大きい。

しかし、これらの研究は遺伝子やそれがコードする蛋白質の性質や役割などを調べる要素研究が中心でした。

遺伝子や蛋白質の異常を調べれば病気の仕組みや治療法が解ると期待されてきましたが、それは稀な例で、一般的には事態はもっと複雑であることが解ってきました。

人間をはじめとする生物では、遺伝情報に従って蛋白質分子がつくられ、分子の階層の働きが組み合わさり細胞につながり、多種多様な細胞の働きが器官の働きにつながっていきます。すなわち、生命活動は複雑な階層構造を持つダイナミックなシステムで営まれています。生命機能、そしてその異常(病気)を理解するためには、従来の研究に加え、これからは要素を統合する、すなわち、要素が構成する複雑な階層をもつシステムを研究することが重要です。

現在、分析計測技術が飛躍的に進歩しており、分子、細胞、器官、そして個体に至る各階層の詳細なデータが得られるようになってきています。

しかし、問題はこれらの階層を如何につなぐかということです。例えば、細胞の場合、そこで起こっている多種多様な分子反応の組合わせの数は膨大になり、この膨大な数の分子反応の組合わせを如何に統合して、細胞の状態を捉え、その運命を予測し操作するかという問題を解くということです。

すなわち、細胞や個体の異常(病気)は遺伝子や分子の異常と1:1でつながっているのではなく、多くの要因が階層間で複雑に絡み合って起こるのです。

我々はこの難解な問題に挑戦する強力なツールを手に入れました。一秒間に10の16乗回の四則計算を行うスーパーコンピュータ「京」です。

各階層で得られた膨大なデータを基に計算機シミュレーションで分子から細胞、個体まで階層をつなぐことを可能にすると期待されます。しかし、実験データを計算すれば階層がつながるというほど単純な問題ではありません。細胞の場合であれば、単純な分子反応の組合わせでは組合わせ爆発がおこり上の階層の細胞の記述は不可能です。そこには、自由度の何桁にも及ぶ劇的なリダクションの仕組みがあるはずで、それを探る実験的、理論的研究との密な融合が必須です。

HPCI戦略プログラム 分野1(SCLS)の活動は、生命科学にとっても計算科学的に見ても新たなチャレンジになります。この新たなクライテリアをみなさんと一緒に切り開いていきたいと考えております。

統括責任者(Program Director)

柳田敏雄

統括責任者プロフィール

氏 名
柳田 敏雄(やなぎだ としお)
本 籍
兵庫県
生年月日
1946年10月10日
大阪大学
大学院生命機能研究科特任教授
免疫学フロンティア研究センター 副拠点長
名誉教授
情報通信研究機構/大阪大学
脳情報通信融合研究センター長
理化学研究所
生命システム研究センター長
学会
日本物理学会
日本学術会議会員
自然科学研究機構分子科学研究所研究顧問
ゴードン会議(1分子生物物理)副議長(2012~2014)、議長(2014~2016)
1998年 4月 日本学士院賞 恩賜賞 (日本学士院)
1999年 1月 朝日賞 (朝日新聞社)
2013年 11月 平成25年度 文化功労者

 

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