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  「京」は医学・生命科学を新次元に導いた。   がんはウイルス感染が原因となっていることもある。ヒトT細胞白血病ウイルス1型は、日本が主要な流行地域だ。乳児期に感染し数十年を経て成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)という極めて悪性度の高い血 液がんを発症する。世界最大規模のATL症例(400例以上)を用いて、大規模オミクスデータ解析を行い、ATLの遺伝子異常の全容を解明するとともに新規治療薬剤の開発に向けた標的を発見した(Nature Genetics 2015)。また、大腸がんが時空間で進化し多様性を獲得し、肝臓に転移する全貌を大規模データ解析で明らかにし、シミュレーションも実施した (PLoS Genetics 2016)。個々人に対する抗がん剤の効果予測では、600以上の様々ながんの遺伝子発現データと100以上の薬剤に対する感受性・耐性データから、世界最大規模の遺伝子ネットワーク解析を実施し、世界最高精度の個別化抗がん剤投薬基盤を構築した(PLoS One 2014)。   赤ちゃんの体はとても熱い。これは褐色脂肪細胞が熱産生をしているためだが、大人ではその細胞は消える。一方、4℃の実験室で飼ったマウスは、脂肪細胞が褐色細胞とは異なるベージュ色のアンチメタボ細胞に変身し、骨格筋の100倍の熱を産生することが知られている。大規模遺伝子ネットワーク解析により、IL-1βという炎症に関与する生理活性物質と熱産生のメカニズムが初めてつながり、アンチメタボ細胞への変身の分子メカニズムの全容を解明した(図)(Cytokine 2016)。   類似配列を超並列化・高速計算するGHOST-MPを開発し、ヒト糞便メタゲノム解析が10分以内に可能になり、免疫研究者と共同でコレラに対する交差抗原を誘導出来る常在菌の同定が劇的に進んでいる。『「京」でワクチン』が強く期待されている。

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図:「京」を使って初めて可能となる規模のネットワーク解析によりアンチメタボ細胞への変身のメカニズムを解明

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Open Up Special Talk 4課題の5年間の取り組みと成果
課題1  細胞内分子ダイナミクスのシミュレーション
課題2  創薬応用シミュレーション
課題3  予測医療に向けた階層統合シミュレーション
課題4  大規模生命データ解析