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講義の内容紹介(2015年度)

計算生命科学の基礎 Ⅱ シラバス

-生命科学と理工学の融合による生命理解と健康・医療への応用-

(講義資料はこちらでご確認ください。パスワード付のものは受講者限定です。)

2015.10.7
  • はじめに:計算生命科学の概要
    田中 成典(神戸大学大学院システム情報学研究科 教授)

    コンピュータやIT技術、情報科学の進歩とともに近年急速に進展してきた計算生命科学が、いかに生物学、医学・薬学、農学などの生命科学の研究を促進してきたのか、その理論的背景は何であったのかを、核酸やタンパク質の分子レベルから細胞、組織、臓器レベル、さらには個体間や環境との相互作用(生態系)レベルの階層性を意識しながら示し、もって本講義全体の導入的紹介とする。

 

第1編 ゲノムから見る生命科学

<参考図書>

 1. 柳田敏雄他「計算と生命」岩波書店(2012)
 2. Uri Alon (著)、倉田博之・宮野悟 (訳)「システム生物学入門 -生物回路の設計原理- 」共立出版 (2008)
 3. Gregory N. Stephanopoulos ,Jens Nielsen ,Aristos A. Aristidou (著)、 清水浩・塩谷捨明 (訳)「代謝工学―原理と方法論」東京電機大学出版局 (2002)

2015.10.14
  • 「ヒトの病気はヒトの研究で~生命情報の統合によるヒト生物学と先制医療」
    松田 文彦(京都大学大学院 医学研究科 附属ゲノム医学センター センター長)

    実験動物や細胞でヒトの病気を研究するのではなく、ヒトが極めて多様な集団であることを意識しつつ、各個人から得られる様々な生命情報を統合した生命ビッグデータを解析することで、さまざまな疾患の発症機構の解明および疾患の超早期診断や予後予測を試みる「ヒト生物学」の目指すところとその方法論について紹介する。
2015.10.21
  • 「生物システムの設計:システム生物学から合成生物学へ」
    荒木 通啓(神戸大学自然科学系先端融合研究環 特命准教授)

    人工物の設計にCAD(Computer-Aided Design)が利用されるように、生物システムの設計にも計算科学の果たす役割が益々大きくなってきている。ここでは、生物システムの中でも遺伝子回路と代謝ネットワークの設計を中心に、計算科学的アプローチの観点から、システム生物学から合成生物学への展開について紹介する。
2015.10.28
  • 「遺伝子ネットワーク解析:細胞の状態変化の過程を探る」
    松田 秀雄(大阪大学大学院情報科学研究科 教授)

    生体内の細胞は周囲の環境変化に合わせてその状態を変化させている。この過程で生じている現象を理解するため、細胞内の遺伝子の量の経時変化を計測し、そのデータをもとに遺伝子間の制御関係である遺伝子ネットワークを推定する手法について紹介する。細胞の状態変化の例として細胞分化等を取り上げ、そこで働く遺伝子ネットワークの解析例を示す。
2015.11.4
  • 「到来する大規模生命情報の解析に備えて」
    土井 淳(株式会社セルイノベーター 取締役 研究開発部部長)

    The Cancer Genome Atlas (TCGA) を始め、ConnectivityMap, BioGPS など、公開されている大量の遺伝子発現データを閲覧、利用する方法を紹介する。また、1000サンプル以上の遺伝子発現プロファイルを扱った経験から、ヒートマップ、クラスタリング図など、基礎的なデータ表示の読み取り方および、データドリブンで構築される情報を解釈する際の問題点などを取り上げる。

 

第2編 タンパク質からみる生命科学

<参考図書>

 1. 柏木浩・佐藤文俊(著・監修)「タンパク質量子化学計算」アドバンスソフト(2004)
 2. 神谷成敏・肥後順一・福西快文・中村春木(著)「タンパク質計算科学:基礎と創薬への応用」共立出版(2009)
 3. Merz, Ringe, Reynolds(著)、田之倉優・小島正樹(訳)「ドラッグデザイン:構造とリガンドに基づくアプローチ」東京化学同人(2014)
 4. S. Tanaka,Y. Mochizuki,Y. Komeiji,Y. Okiyama and K. Fukuzawa,”Electron-Correlated Fragment-Molecular-Orbital Calculations for Biomolecular and Nano Systems”,Phys. Chem. Chem. Phys. 16 (2014) pp.10310-10344

2015.11.11
  • 「計算生命科学のための量子化学基礎」
    佐藤 文俊(東京大学生産技術研究所 教授)

    それほど単純ではありませんが「量子力学によって物理学や化学が取り扱う多くの分野で基礎となる法則が完全に明らかになった」とも言われる。ただ、法則が明らかになったことと、現実の研究の場にその法則を適用することとの間には多くの困難な問題が潜んでいる。ここではその困難を乗り越える前準備として、計算生命科学に必要十分な範囲で、わかりやすく量子化学の基礎を紹介する。なお、量子化学は分子動力学計算でも必須の学問である。
2015.11.18
  • 「タンパク質の量子化学計算」
    田中 成典(神戸大学大学院システム情報学研究科 教授)

    コンピュータの進歩もあって、タンパク質などの生体高分子の電子状態を高速かつ高精度に計算できる量子化学的手法が開発されてきている。本講義では、タンパク質の量子化学計算を実現するために開発されている密度汎関数(DFT)法やフラグメント分子軌道(FMO)法などを概説し、それが実際の様々な問題にどのように応用されているかを紹介する。また、古典力学的な計算手法や、量子力学と古典力学をハイブリッドしたQM/MM法などとの関連性についても述べる。
2015.11.25
  • 「分子動力学計算によるタンパク質の機能解析」
    中津井 雅彦(京都大学大学院医学研究科 助教)

    計算科学的手法の一種である分子動力学(MD)計算について、その基礎理論と実際の計算方法について概説する。また、タンパク質の分子動力学シミュレーションを行う上で必要となる背景知識(力場の取り扱い)や計算手順、および解析法を紹介する。
2015.12.2
  • 「分子動力学計算を活用したインシリコ創薬」
    広川 貴次(産業技術総合研究所創薬分子プロファイリング研究センター 研究チーム長)

    スーパーコンピュータ「京」に代表されるような大規模計算環境の発展と分子動力学計算を中心とした分子シミュレーション技術が相俟って、インシリコ創薬による開発プロセスの効率化と革新的な創薬支援が期待されている。特に、分子動力学計算は、標的タンパク質の動的構造の解析、高精度結合自由エネルギー計算、化合物作用機序解析などに活用されており、創薬支援研究に欠かせない要素技術となっている。本講義では、分子動力学計算を活用したインシリコ創薬を概説し、国内外の動向、そして実際の活用事例などを紹介する。
2015.12.9
  • 「QM/MMシミュレーションによるタンパク質機能解析」
    鷹野 優(広島市立大学大学院情報科学研究科 教授)

    タンパク質は巨大かつヘテロな系であり、機能を有効に発揮するため、相互作用する対象や環境に対応して、その「かたち」を変化させる。このような複雑かつダイナミックなタンパク質が織りなす機能を理解・予測するために、機能発現に関わる局所部分(活性中心)には量子力学(QM)を、活性中心を取り囲むタンパク質の「かたち」の変化・ダイナミクスには古典力学(MM)を適用したQM/MMシミュレーションは極めて有効であり、特にタンパク質の理論的研究では常套手段となっている。本講義ではQM/MMシミュレーションの理論背景からはじめ、タンパク質の機能解明への応用について紹介する。

 

第3編 医療・創薬における計算生命科学

<参考図書>

 1. 岡谷貴之(著)「深層学習」講談社(2015)
 2. 佐藤洋行、原田博植 他(著)「データサイエンティスト養成読本」技術評論社 (2013/8/8)
 3. 日本化学会情報化学部会誌 Vol. 31(2013) No. 3 10月号
       https://www.jstage.jst.go.jp/browse/cicsj/31/3/_contents/-char/ja/

       日本化学会情報化学部会誌 Vol. 31(2013) No. 4 11月号
       https://www.jstage.jst.go.jp/browse/cicsj/31/4/_contents/-char/ja/
 4.  K.M.Merz,Jr.,D.Ringe,C.H.Reynolds(著)、田之倉優・小島正樹(訳)「ドラッグデザイン 構造とリガンドに基づくアプローチ」東京化学同人(2014)

2015.12.16
  • 「製薬企業におけるデータ駆動型の研究開発」
    都地 昭夫(塩野義製薬株式会社解析センター グループ長)
    北西 由武(塩野義製薬株式会社解析センター サブグループ長)

    Big dataを含むAny dataは医療、製薬分野においてイノベーションの鍵となりうると考えられる。そこでAny dataの概論から始め、解析を行うためのアプローチや将来展望などを製薬企業における事例を交えながら解説する。加えて、解析の基本となる統計手法やデータの可視化、IT技術についても紹介する。また、膨張し続けるデータとともに急激に発展しつつある深層機械学習についても触れる。
2016.1.13
  • 「フラグメント分子軌道法によるタンパク質-リガンド相互作用の高精度解析と創薬への応用 」
    福澤 薫(日本大学松戸歯学部 助教)

    量子化学計算の一手法であるフラグメント分子軌道(FMO)法は、タンパク質の電子状態を高速かつ高精度に計算できる手法として、インシリコ創薬における利用が期待されている。特に標的タンパク質とリガンドとの相互作用を精密に評価できるため、相互作用の理解から化合物のデザインにまで応用することが可能である。本講義では、FMO法の解説とタンパク質-リガンド相互作用への適用例、そして産学官連携コンソーシアムによる「FMO創薬」の最近の取り組みについても紹介する。
2016.1.20
  • 「創薬と医療のためのシミュレーション科学とビッグデータ科学」
    奥野 恭史(京都大学大学院医学研究科 教授)

    スーパーコンピュータ「京」に代表されるHPC(High Performance Computing)の進展により、創薬・医療などの生命科学分野における「シミュレーション科学」の重要性は高まる一方である。また、近年のハイスループット技術やオミクス計測技術の著しい進展に伴い、生命科学分野においてもデータ爆発が起こり、「ビッグデータ科学」の研究開発が急務とされている。ここではこれらシミュレーション科学とビッグデータ科学の創薬・医療応用について紹介する。
2016.1.27
  • 「創薬における計算生命科学:インフォマティクスとシミュレーションを融合したインシリコスクリーニング」
    本間 光貴(理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター チームリーダー)

    近年の創薬において、タンパク質-リガンド間のドッキングによるインシリコスクリーニングは無くてはならないものとなっている。一方、適切なドッキングを行うためには、タンパク質構造の自由度の考慮、精度の良い結合親和性評価に加えて、計算のスピードとのバランスも重要である。これらのポイントのそれぞれの最近の動向を説明するとともに、具体的な創薬事例について紹介する。
2016.2.3
  • 「大規模計測と大規模計算の時代の脳科学」
    銅谷 賢治(沖縄科学技術大学院大学学園神経計算ユニット 教授)

    脳全体の構造、結合と活動を計測するMRI技術や、その局所回路の神経細胞の活動をまるごととらえる蛍光分子と顕微鏡技術の進歩により、脳科学はビッグデータサイエンスになりつつある。そこでは膨大な計測データからの情報抽出と、多様なデータを統合する数値モデルのシミュレーションのために、大規模計算が不可欠の要素になってきている。この講義では、日米欧の大規模脳科学プロジェクトにおいて計算技術の果たす役割と、我々が行っている脳イメージングと大規模シミュレーションについて紹介するとともに、ボトムアップのデータ駆動のアプローチに対応したトップダウンの理論的アプローチのあり方について考察する。
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