メニュー
メニュー

課題2 創薬応用シミュレーション

平成25年度~27年度における実施計画

研究開発課題の概要

超並列アルゴリズムを用いた分子動力学シミュレーションで、タンパク質とリガンドの結合自由エネルギーを高精度に計算できる可能性が出て来た。この方向の研究を積極的に進展させて実用性の高い技術に高める為に、次世代スーパーコンピュータ「京」の計算能力をフルに活用して、創薬プロセスを革新する新しいComputer Aided Drug Design (CADD)技術の確立を目指す。新しい治療薬が待望されている病気の標的タンパク質に対する薬候補化合物をこの新技術を用いて設計して実際の薬開発における有用性を検証する。

研究開発課題の内容

超並列結合自由エネルギー計算法

図4 超並列結合自由エネルギー計算法 (MP-CAFEE)

創薬標的タンパク質と低分子基質の溶液中での結合・解離定数は、ギブス自由エネルギーで記述されるが、その導出方法について様々な理論的試みがなされている。その中で藤谷等が開発した超並列結合自由エネルギー計算(MP-CAFEE)法は非平衡統計力学理論に基礎を置いたもので、次世代スーパーコンピュータ「京」の様なCPUを沢山持った超並列計算機に適した理論骨格を持っている。この方法で創薬標的タンパク質と薬化合物の結合自由エネルギーを高精度に求めて薬化合物の構造を最適化する技術の開発を進める。
薬化合物の構造最適化を始める最初のリード化合物を見つける為にDocking simulationも活用するが、従来のDocking モデルではタンパク質に結合する小分子を見つけ出すのが困難な場合がある。この様な標的タンパク質に対して、候補化合物を新規に探し出すためのDe Novo設計技術を用いて、タンパク質に結合するフラグメントを複数個求めて、それらを結合して化合物骨格を形成し、タンパク質との相互作用エネルギーを調べて、系統的に化合物空間を探索して有望な化合物骨格を選別したり結合を強める為の化合物修飾を施したりして薬候補化合物の構造最適化を行う。

図5 創薬プロセスと京コンピュータプロジェクトの関係

図5 創薬プロセスと京コンピュータプロジェクトの関係

疾患治療薬を新規に開発するには図5に示す様に多くのプロセスが必要である。新しい治療薬が待望されている疾患の標的タンパク質に有効に作用する薬候補化合物を、京コンピュータを用いて設計するために本プロジェクトでは既に疾患の発生メカニズムが解明されてX線結晶構造解析で立体構造が得られている標的タンパク質を取り上げる。その活性中心の形状に合致し結合強度が期待される化合物を新規設計したり化合物データベースから探索する。京コンピュータでその薬としての活性強度を計算し、結果を解析してより良い特性を持った薬候補化合物を設計する。計算で良い特性が期待される化合物は、実際に合成してその特性を化学・細胞アッセイで検証する。

具体的な成果目標

平成27年度末までに、新しい治療医薬品が待望されている複数の標的タンパク質について、それらに十分な強度で結合する薬候補化合物を設計して、その設計技術の有用性を実験データと比較して検証する。

pagetopへ