理化学研究所 次世代計算科学研究開発プログラム
田村 栄悦
2011年も押し迫った12月21日(水) 0 22日(木)の両日、東京大学本郷キャンパスにある武田ホールにおいて「ISLiM成果報告会2011」が開催されました。
次世代生命体統合シミュレーションソフトウエアの研究開発(ISLiM)プログラムは、スーパーコンピューター「京」の開発に併せて、生命現象に対する理解を深め、特に創薬・医療に役立てることを目的に2006年10月に発足しましたが、終了まで一年を残すところとなりました。14研究機関の研究者の努力により、大規模かつ高精度のシミュレーションを効率良く実行するためのISLiM開発ソフトウェアの並列化チューニングも、33本のソフトウェアを対象に、京を使用して着々とすすんでいる状況です。そうした中、ISLiM成果報告会2011には、産業界、大学、公的研究機関等から141名の創薬・医療等の専門家にご参加をいただき、ISLiM ソフトウェア開発者が二日間にわたってその最新成果を発表しました。
はじめに次世代計算科学研究開発プログラムの茅幸二プログラム・ディレクターがオープニング・スピーチを行ないました。続いて、姫野龍太郎副プログラム・ディレクターが、2011年4月以降(一部は3月)から京を実際に使用して開発を進めているアプリケーションソフトウェアの最新の開発状況と性能データ(暫定値)を紹介しました。2012年11月の京の本格稼働に向けてISLiM ソフトウェアの最適化を鋭意進めている状況にあり、すでに一部のソフトウェア (cppmd やZZ-EFSI)は、京のピーク性能の20% 0 30%の実効性能値(暫定値)に達しています。今後さらに性能向上に努めると共に、これらのソフトウェアを普及させる方向に力をシフトするということでした。このあとISLiM 全6チーム(分子スケール研究開発チーム、細胞スケール研究開発チーム、臓器全身スケール研究開発チーム、データ解析融合研究開発チーム、脳神経系研究開発チームおよび生命基盤ソフトウェア開発・高度化チーム)のチームリーダーとISLiMソフトウェア開発責任者が、その最新成果を発表しました。これらの発表資料はISLiMのウェブサイト(URL: http://www.csrp.riken.jp/2011/islim-houkokukai2011_j.html)からダウンロードできます。
二日間という限られた発表時間では、全開発ソフトウェアの詳細についてまでは報告できないため、武田ホール・ホワイエで全開発ソフトウェアについて38枚のポスター展示と説明も行われ、ソフトウェア開発者と参加者による議論がポスターの前で活発に行われていました。
今回、企業からの参加者から、ISLiMがいかに広くかつ深いレベルで実験も含めたソフトウェア研究開発をしてきたか強く実感できた、という成果報告会での発表を評価するコメントも聞くことができました。しかし、そのことは、ISLiM開発ソフトウェアの価値がプロジェクトの外にあまり届けられていなかったということも意味します。2012年秋にISLiM成果報告会2012を開催すると共に、ISLiMの開発ソフトウェアの価値と利用を普及させる取り組みをさらに進めて行く必要があると考えています。
謝辞 京での計算に関しては京速コンピュータ京の試験利用、2011年3月の特別運用での結果です。
BioSupercomputing Newsletter Vol.6