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第2回「京」が切り拓くライフサイエンス最前線!勉強会 開催報告

2015年9月30日(水)プレス関係者の方を対象に、”第2回「京」が切り拓くライフサイエンス最前線!記者勉強会”を開催しました。

「京」による飛躍的な計算規模の拡大は、研究の視野をはじめて生命科学の領域といえるところまで拡げ、いままで見えなかった世界を目の前に見ることができるようになりました。「京」の後継といわれるポスト「京」のプロジェクトにおいては、生命科学研究は国家的に解決を目指す重点課題であるとされ、新たな研究が始められています。

世界最先端のスーパーコンピュータと生命科学が協調して生み出される研究の成果とそこから広がる新たな研究の夢をお伝えすることが目的であったこの勉強会には、東京会場と神戸会場を併せて15名のプレス関係者にご参加いただきました。ありがとうございました。

発表者の要旨につきましては、「プレゼンテーション要旨」にて、また公開可能な発表資料ついては「プログラム」の発表タイトルをクリックしてご覧いただけます。

概要

開催日 2015年9月30日(水)
開催場所 理化学研究所東京連絡事務所
理化学研究所計算科学研究機構(テレビ会議にて接続)
主催 理化学研究所、HPCI戦略プログラム 分野1

プログラム

13:30~13:35 挨拶
理化学研究所HPCI計算生命科学推進プログラム 統括 柳田敏雄
13:35~14:05 予測医療に向けた階層統合シミュレーション
東京大学 高木 周
14:05~14:35 細胞内環境でのタンパク質や核酸の分子ダイナミクスの解析
理化学研究所 杉田有治
14:45~15:15 スーパーコンピュータで薬作りを革新
東京大学 藤谷 秀章
15:15~15:45 大規模生命データ解析
東京大学 宮野 悟
15:45~16:00 個別化・予防医療のための統合計算生命科学
東京大学 宮野 悟
16:00~16:15 ポスト「京」による創薬イノベーション
理化学研究所 奥野 恭史

東京会場の様子

神戸会場の様子

    

プレゼンテーション要旨

予測医療に向けた階層統合シミュレーション
私たちの研究グループは、統合されたシステムとしての人体の再現を目指しています。今回は、「世界初、心筋細胞内の分子の動きから心臓全体の拍動まで一挙にシミュレーションする心臓シミュレータ(UT-Heart)」、「世界最速の流体構造連成シミュレータZZ-EFSIによる血流のシミュレーション」および「世界最大の脳神経系シミュレーションに成功したNESTを用いたパーキンソン病のモデリング」について紹介します。

細胞内環境でのタンパク質や核酸の分子ダイナミクスの解析
従来行われていた溶液中のタンパク質のダイナミクスを、細胞環境をあらわに含むタンパク質群の高解像度シミュレーション解析へ「京」を用いて発展させます。また、DNAが染色体の中でコンパクトに折れ畳まっている様子を計算し実験と比較することで、遺伝情報の転写の分子機構を理解していきます。

スーパーコンピュータで薬作りを革新
人間の長い歴史で偶然と経験頼みであった薬づくりは、近年の分子生物学の進展により疾患治療標的分子を探し出して、その分子の機能を制御する分子標的薬(Molecularly Targeted Drugs)の開発が主流になりました。我々は「京」などの高性能スーパーコンピュータで水中の疾患標的分子と薬候補化合物の相互作用を熱運動シミュレーションで正確に予測して薬を設計する方法を世界に先駆けて確立しました。

大規模生命データ解析
「京」(大規模計算)とヒトゲノム解析センタースパコン(高速ストレージとソフトウェア環境)の長所を生かし、希少がんの全ゲノムシークエンスデータ解析を行い画期的な発見と治療法の可能性が示唆されました。また、大規模シークエンス解析により、再生不良性貧血から12年の時間を経て急性骨髄性白血病へ進化する血液がんの進化の様子を世界で初めてとらえました。

100を超える薬剤に対して、世界最大規模の網羅的がんの薬剤感受性・耐性遺伝子ネットワーク解析を「京」で行い、個々人のサンプルデータから薬剤耐性・感受性を世界最高精度で予測する方法を開発しました。この方法は同時に個々人のバイオマーカの提示も行います。薬剤に関して、がんの個別化医療及び創薬基盤のひとつを構築したと考えています。

肥満にとっては悪玉ともいわれる脂肪細胞は、寒冷刺激によりその一部がベージュ色になって骨格筋の100倍の熱産生能力を持つアンチメタボ細胞に変化します。その全遺伝子を「京」で解析した結果、炎症を引き起こす生理活性物質がアンチメタボ細胞になるかどうかの運命をも決めていることがわかりました。

従来法(BLASTX)の約100倍の高速化を実現し、さらに「京」で超並列化・高速計算するGHOST-MPを開発し、ヒト糞便メタゲノム解析を10分以内という超高速に実現できたことにより、コレラに対する交差抗原を誘導出来る常在菌の同定が急速に進んでいます。東大医科研と東工大との共同研究。

個別化・予防医療のための統合計算生命科学
個別化・予防医療の基盤となる統合計算生命科学を、(A) 大規模データ解析を実現する「情報技術」、(B) 個別化シミュレーションを実現する「物理原理」と「データ」の融合、(C) 分子レベルから生体レベルまでを「物理原理」で統合シミュレーションの3つの原理で確立します。具体的には、サブ課題Aで「大量シーケンスによるがんの個性と時間的・空間的多様性・起源の解明」、サブ課題Bで「データ同化生体シミュレーションによる個別化医療支援」、サブ課題Cで「心臓シミュレーションと分子シミュレーションの融合による基礎医学と臨床医学の架橋」を実施します。

次世代スパコン・ポスト「京」による創薬イノベーション
治療薬の開発が困難な病気はまだまだたくさんあります。ポスト「京」によって、病気の原因分子と薬が作用するすべての様子が予測できるようになるため、病気の原因分子と薬の候補物質との新しい働きやこれまで知られていない作用が解明される可能性があります。これにより、がん、認知症、腎疾患など今まで困難であった薬の開発に新たな道を拓きます。さらに、薬の副作用の予測や、個人ごとに効き目のよい薬を選択することが可能となります。

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